ジンジャーとフレッド、フェリーニは死なず。




子どもの頃にテレビの洋画劇場で観たミュージカル映画で、もっとも記憶にあるのが、

【ウエストサイドストーリー】。その音楽とダンス映像は今も心から消えることのない。

大きな印象だったし、アメリカそのものだったかな。当時はもちろん、

劇場公開のタイムリーではないのだが、中学校の校庭を舞台にして、友達を前にMくんと、

コンビを組んで一緒によく真似して、踊ったものだ。映画に入り込む感覚あったのだろうな。

むろん、踊りはいうまでもなく下手くそながらね。他にも真似たのが【雨に唄えば】。

これは誰もが雨が降れば、踊ったものでないだろうか。主演したジーン・ケリーが、

好きでたまらなかったな。それらの映画のミュージカル特集があれば、

必ずや出てきたダンスの原点は、なんといっても華麗で、踊りで上手という代名詞である、

フレッド・アステアであろう。今回、日常映画劇場でご案内する映画は、

そんなフレッド・アステアの物真似芸人である男が主人公のひとり、そんなお話。。。


名匠フェデリコ・フェリーニ監督の晩年1985年の意欲作【ジンジャーとフレッド】。

ともに映画を制作してきた盟友である、音楽家ニノ・ロータを失っても、

再起をかけて望んだフェリーニの至宝一品である。


主演は、フェリーニのこれまた盟友である、マルチェロ・マストロヤンニと、

愛妻ジュリエッタ・マシーナで、ふたりはこれが初共演の試み!





この映画は映画学生時代に劇場公開タイムリーで、おそらく新宿か、銀座あたりで観たのだろうが、

20数年も歳を重ねた自分には、だいぶ印象が違ったものに、今回は見えてきた。


フェリーニ監督らしい喧騒と、混沌とした猥雑さは、確かに全盛期の作品比べれば、

いささか監督もお歳であり、落ち気味であるのはいうまでもないが、それでもテレビ業界への批判、

嫌味な描写、うす気味の悪さは、今見てもかなり良い感じで満載である。


そこにマルチェロ・マストロヤンニと、ジュリエッタ・マシーナの誇り高き物真似芸人?が、

見せもの扱いされるゲストに混ざる。そこでプライドを持ちながらも、老いてしまった心情的や、

男女の芸人コンビである、過去のロマンスの微妙な心の揺れが、鑑賞する側に意地らしく、

優しく伝わってくる。それはテレビ界の猥雑さと混沌した仕事や状況の合間に、

突然生まれる静寂のなかで、あまりにも美しい。ふたりが徐々に過去のように心を交わすのだ。


たとえば2人だけの白いトイレ改装中の楽屋裏や、真っ暗闇に停電するステージと、

うまく混乱との対比でメリハリが利いていた。このあたりは今見ても新鮮でとてもうまい。

それに静かに対話するふたりは、フェリーニ監督の初期作品に近いかもね。


フレッドアステアとジンジャーロジャースを物真似を名乗り、過去には人気を得て、

踊っていた老芸人が、停電後に覚悟をして、踊る姿には涙が止まらなかったよ。

本物でなくとも、たとえそれが物真似や偽物だろうと、ふたりが気持ちを交わした過去や、

芸のために踊ってきた間柄は、けして嘘や幻ではなく、愛そのもの真実だったのだろう。

そこをフェリーニ監督は温かく抱擁してくれる。


再度、この作品を見直すことで良さに痛感。流石にフェリーニ監督だと思ったよ。

テレビのCMが途中に不意に意味なく入ることも、演出も面白いしね。良いよ良いよ。

きっと若い頃には涙は出なかった映画だったかな。自分も老いたのだろうが、涙、涙でした。

そしてフェリーニ監督は、良い映画をつくってくれたものだと、改めて思い起こした。


あのテレビ局での停電のシーンは映画として名シーンである。映画はかならず終わるという蜜月。

電気テレビのなかであれだけが映画で、劇場の暗闇と同じ意味であろう。

永遠に続いてほしい映画の時。。。。それでも映画はかならずラストシーンがあり、

鑑賞側もずっとはいられない。映画という優しい暗闇から目を覚ますのだから。。あまりに巧みだ。


映画のラストシーンの舞台では、喧騒のローマ駅で最後にふたりは別れる。

時間がなく食事すらできないし、(後ろ髪ひかれ尾を引きずるからしないのだろう)

返却されないだろうお金だけをジンジャーは、フレッドに貸し握らせる。

船の汽笛の真似。そしてステップ。どれもがもうそこでは、ジンジャーとフレッドという、

ふたりだけの静寂の時は生まず、祭りの後の感傷的な風すら吹かない。

ただただ現実へと列車は走りだす。。。。。


それでもふたりは、前よりも一層に絆として繋がってることはいうまでもない。  出町光識



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出町光識ホームページhttp://www.mitsunoridemachi.com/

~展覧会の告知~
開催企画:小名浜国際環境芸術祭
開催場所:環境水族館アクアマリンふくしま(福島県いわき市) 
開催期間:2012年9月15日(土)~11月11日(日)
*2003年に開催されてから今回で9回目。キッズアート展での関連企画で、
ぼくと福島県立博物館の連携で実行した、震災後に福島県内外(世界中)の、
子どもたちから寄せられた、アクアマリンへの応援する魚の絵メッセージカードを、
2012再構成展示しました。ご協力してくれた子どもたちありがとう!

他にも大漁旗デザイン展や地球環境の保全、海洋資源の持続可能な利用をテーマとした、
芸術作品を展示されます。 ぜひ福島へお出かけください。



出町光識うつわ展 陶庫石蔵ギャラリー  彩泥:カップいろいろ。
 10月27日~11月14日 栃木県益子町城内坂2 TEL 0285-72-2081
泥‐Ingシリーズの器展です。この期間の一部は益子陶器市にかぶりますので、
皆さんのお越しをお待ちしていす。
*完売しましたマグカップは、11月5日に追加しました。

by ubusuna-art | 2012-11-07 08:04 | 映画・テレビ(寄り神)


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