【卵】【ミルク】【蜜蜂】どれがお好み?
はい、こんばんは。日常是映画劇場は、セミフ・カプランオール監督のトルコ映画、
【卵】【ミルク】【蜜蜂】。ユスフ3部作です。
3部作といっても、同じ主人公の生い立ちなのか?そうでないのか?は、
監督は映画を観る鑑賞者にゆだねます。同じ名前のユスフ。それがこのシリーズでは、
壮年、青年、少年と分けて、時間系列は逆行し制作されて物語を紡ぎます。
しかしそこで、懐かしい幼年期への思い出という情感などはなく、映画に出てくる小道具である、
携帯電話や携帯メール、それから年号のセリフからもとれるように、
すべてが同時代の今のトルコなのだと思います。そこがまた不思議な面白みの映画です。
それでも癲癇の病や、詩人であるユスフと母の関係などの共通点が描かれていますから、
同じユスフととる方が、豊かに映画は楽しめるのではないでしょうか。
実はこのユソフ3部作を見られた方は、【蜜蜂】(2010年)の少年時代が初めてという、
ファンの方も多いそうです。これは第60回ベルリン国際映画祭金熊賞を、
【蜜蜂】が受賞したためかもしれませんね。映画ファンの皆さんには、
人気が高いの【蜜蜂】らしいですが、個人的には【卵】が一押しのお薦め。(2番は【ミルク】)
では、ご案内は、1作目の【卵】(2007年作品)は、ユソフが壮年として登場し、
長らく音信不通であった母ゼーラの死、その別れの葬儀の話。
冒頭カットシーンは、引いた遠景ロングショット。これがなんとも美しい。
少し色が緑みがかる靄の漂う田舎道。夢なのか?幻想なのか?
それとも遠いイスタンブールに住むユスフのもとへ、田舎から母ゼーラが会いに来て、
此岸から彼岸へと旅立つのでしょうか?
これを分かれ道を歩む母ゼーラの構図で、パン(撮影技法)でフォローします。
パンとは、カメラを三脚に固定し首を振るように撮影する方法。これに似た方法で、
多くの映画で使われるのが、ドリーという、レールを引いてカメラを移動撮影する方法。
この二つは似ているようで、観る側の印象はだいぶ異なります。なので演出法や映画文法にも、
大きく影響が出るのです。しかし、ここ【卵】では、パンの違和感を巧みに使い、
正直上手いなぁと思いました。このカットでパンフォローした後、母ゼーラは遠景の糸杉に、
姿を消していくのですが、映画が進み、後で母親を埋葬したシーンで、
糸杉のある墓地から立ち去るユソフを、今度は逆パンで同じようにフォローし、
彼岸から此岸に戻るイメージがあり、映画の冒頭カットとシンクロしています。
これで母親がユソフに会いに来たのだというのが、ここ理解できます。
冒頭ワンカットのイメージシーンでこれだけ、時間かけ説明してしまうと、後がつらいかな???
でももう少し、【卵】冒頭のくだりをお話しますね。その後、ユソフが働く古本屋に、
豊満な肉体を露わにした黒ドレスの女が現れます。そして片手には赤ワイン。
これからパーティがあり、プレゼントに料理の古本が欲しいという。
もう、お分かりでしょうか?この比喩はイスラム教では、どのように映るのでしょう。
宗教のことはあまりわかりませんが、イスラム教では赤ワインは悪魔がつくりだしたといわれ、
アッラーを忘れさせる飲み物といわれるそうです。このシーンで女がユソフにいいます、
書物と赤ワインを交換したいと。悪魔(黒服の女)がパーティで、料理って何するの?と、
ぼくなどはイメージをひろげてしまいます。そこで先ほどから古本屋店内で鳴る電話が、
悪い知らせであるというのも暗示しているのでしょう。(母親ゼーラの死)
ここまででも凄い映画なのに、さらにここで画面は黒身になり、クレジット紹介が入ります。
そこでユソフは、慌てて店じまいをし、母ゼーラの暮らすに田舎に車を走らせていく様子を、
効果音のみで紡いでいくのです。もう、ここまでいえばどのくらいこの映画すごいか、
皆さんもお分かりになるでしょう。
それから見慣れないトルコ風景が映し出され、コーランが遠くで聞こえ、
映画のテンポは緩やかに進み、映画を観ているのか絵画を観ているのか、判らなくなるほどです。
3部作すべてがそうで、ましてや自然な状況音のみで全編ですから、おそらく、
寝てしまう人も多いのでないでしょうか。
そして大胆にもストーリーのシークエンスが飛んでしまったの?思うほどに、
見せないエピソードがあるのも、この3部作の特徴ですね。
しかし、本当に観れば観るほど、豊かな表現方法がここ、そこに盛り込まれた演出です。
そして何とも優れているのは、ラストシーンの終わり方のなのです。
これは書きませんが、素晴らしい。映画史のお手本ですね。とくに【卵】。唸ります。ワンワン。
さてさて、少し今回の映画作品が通好みであるため、ご案内も深く斬り込みすぎたかな。
では〆にしましょう。この3作品に登場するそれぞれのユソフは同じ名前ですが、
年齢や状況だけでなく、どこそこで誤差や異なり、ひとりの人物でないところで、
なおさら主人公の孤独感と寂しさが漂います。その様子が誰しものなかにある日常のようで、
ぼくら映画を観ている側が、ある意味ではユソフなのかも知れません。名作ですね。
出来れば3部作を制作順に観ることをお薦めいたします。
では最後に、2作目の【ミルク】の予告を紹介して、本日の日常是映画劇場は、
さよなら、さよなら、さよなら。。。。
追記 この【卵】【ミルク】に出てくる女優さん、サーデット・ウシュル・アクソイは素敵です。
必見!そこもお薦め!!!!!!!!
応援のぽちっとな~~~。
出町光識ホームページhttp://www.mitsunoridemachi.com/
~展覧会の告知~
開催企画:小名浜国際環境芸術祭
開催場所:環境水族館アクアマリンふくしま(福島県いわき市)
開催期間:2012年9月15日(土)~11月11日(日)
*2003年に開催されてから今回で9回目。キッズアート展での関連企画で、
ぼくと福島県立博物館の連携で実行した、震災後に福島県内外(世界中)の、
子どもたちから寄せられた、アクアマリンへの応援する魚の絵メッセージカードを、
2012再構成展示しました。ご協力してくれた子どもたちありがとう!
他にも大漁旗デザイン展や地球環境の保全、海洋資源の持続可能な利用をテーマとした、
芸術作品を展示されます。 ぜひ福島へお出かけください。
【卵】【ミルク】【蜜蜂】。ユスフ3部作です。
3部作といっても、同じ主人公の生い立ちなのか?そうでないのか?は、
監督は映画を観る鑑賞者にゆだねます。同じ名前のユスフ。それがこのシリーズでは、
壮年、青年、少年と分けて、時間系列は逆行し制作されて物語を紡ぎます。
しかしそこで、懐かしい幼年期への思い出という情感などはなく、映画に出てくる小道具である、
携帯電話や携帯メール、それから年号のセリフからもとれるように、
すべてが同時代の今のトルコなのだと思います。そこがまた不思議な面白みの映画です。
それでも癲癇の病や、詩人であるユスフと母の関係などの共通点が描かれていますから、
同じユスフととる方が、豊かに映画は楽しめるのではないでしょうか。
実はこのユソフ3部作を見られた方は、【蜜蜂】(2010年)の少年時代が初めてという、
ファンの方も多いそうです。これは第60回ベルリン国際映画祭金熊賞を、
【蜜蜂】が受賞したためかもしれませんね。映画ファンの皆さんには、
人気が高いの【蜜蜂】らしいですが、個人的には【卵】が一押しのお薦め。(2番は【ミルク】)
では、ご案内は、1作目の【卵】(2007年作品)は、ユソフが壮年として登場し、
長らく音信不通であった母ゼーラの死、その別れの葬儀の話。
冒頭カットシーンは、引いた遠景ロングショット。これがなんとも美しい。
少し色が緑みがかる靄の漂う田舎道。夢なのか?幻想なのか?
それとも遠いイスタンブールに住むユスフのもとへ、田舎から母ゼーラが会いに来て、
此岸から彼岸へと旅立つのでしょうか?
これを分かれ道を歩む母ゼーラの構図で、パン(撮影技法)でフォローします。
パンとは、カメラを三脚に固定し首を振るように撮影する方法。これに似た方法で、
多くの映画で使われるのが、ドリーという、レールを引いてカメラを移動撮影する方法。
この二つは似ているようで、観る側の印象はだいぶ異なります。なので演出法や映画文法にも、
大きく影響が出るのです。しかし、ここ【卵】では、パンの違和感を巧みに使い、
正直上手いなぁと思いました。このカットでパンフォローした後、母ゼーラは遠景の糸杉に、
姿を消していくのですが、映画が進み、後で母親を埋葬したシーンで、
糸杉のある墓地から立ち去るユソフを、今度は逆パンで同じようにフォローし、
彼岸から此岸に戻るイメージがあり、映画の冒頭カットとシンクロしています。
これで母親がユソフに会いに来たのだというのが、ここ理解できます。
冒頭ワンカットのイメージシーンでこれだけ、時間かけ説明してしまうと、後がつらいかな???
でももう少し、【卵】冒頭のくだりをお話しますね。その後、ユソフが働く古本屋に、
豊満な肉体を露わにした黒ドレスの女が現れます。そして片手には赤ワイン。
これからパーティがあり、プレゼントに料理の古本が欲しいという。
もう、お分かりでしょうか?この比喩はイスラム教では、どのように映るのでしょう。
宗教のことはあまりわかりませんが、イスラム教では赤ワインは悪魔がつくりだしたといわれ、
アッラーを忘れさせる飲み物といわれるそうです。このシーンで女がユソフにいいます、
書物と赤ワインを交換したいと。悪魔(黒服の女)がパーティで、料理って何するの?と、
ぼくなどはイメージをひろげてしまいます。そこで先ほどから古本屋店内で鳴る電話が、
悪い知らせであるというのも暗示しているのでしょう。(母親ゼーラの死)
ここまででも凄い映画なのに、さらにここで画面は黒身になり、クレジット紹介が入ります。
そこでユソフは、慌てて店じまいをし、母ゼーラの暮らすに田舎に車を走らせていく様子を、
効果音のみで紡いでいくのです。もう、ここまでいえばどのくらいこの映画すごいか、
皆さんもお分かりになるでしょう。
それから見慣れないトルコ風景が映し出され、コーランが遠くで聞こえ、
映画のテンポは緩やかに進み、映画を観ているのか絵画を観ているのか、判らなくなるほどです。
3部作すべてがそうで、ましてや自然な状況音のみで全編ですから、おそらく、
寝てしまう人も多いのでないでしょうか。
そして大胆にもストーリーのシークエンスが飛んでしまったの?思うほどに、
見せないエピソードがあるのも、この3部作の特徴ですね。
しかし、本当に観れば観るほど、豊かな表現方法がここ、そこに盛り込まれた演出です。
そして何とも優れているのは、ラストシーンの終わり方のなのです。
これは書きませんが、素晴らしい。映画史のお手本ですね。とくに【卵】。唸ります。ワンワン。
さてさて、少し今回の映画作品が通好みであるため、ご案内も深く斬り込みすぎたかな。
では〆にしましょう。この3作品に登場するそれぞれのユソフは同じ名前ですが、
年齢や状況だけでなく、どこそこで誤差や異なり、ひとりの人物でないところで、
なおさら主人公の孤独感と寂しさが漂います。その様子が誰しものなかにある日常のようで、
ぼくら映画を観ている側が、ある意味ではユソフなのかも知れません。名作ですね。
出来れば3部作を制作順に観ることをお薦めいたします。
では最後に、2作目の【ミルク】の予告を紹介して、本日の日常是映画劇場は、
さよなら、さよなら、さよなら。。。。
追記 この【卵】【ミルク】に出てくる女優さん、サーデット・ウシュル・アクソイは素敵です。
必見!そこもお薦め!!!!!!!!
応援のぽちっとな~~~。
出町光識ホームページhttp://www.mitsunoridemachi.com/
~展覧会の告知~
開催企画:小名浜国際環境芸術祭
開催場所:環境水族館アクアマリンふくしま(福島県いわき市)
開催期間:2012年9月15日(土)~11月11日(日)
*2003年に開催されてから今回で9回目。キッズアート展での関連企画で、
ぼくと福島県立博物館の連携で実行した、震災後に福島県内外(世界中)の、
子どもたちから寄せられた、アクアマリンへの応援する魚の絵メッセージカードを、
2012再構成展示しました。ご協力してくれた子どもたちありがとう!
他にも大漁旗デザイン展や地球環境の保全、海洋資源の持続可能な利用をテーマとした、
芸術作品を展示されます。 ぜひ福島へお出かけください。
by ubusuna-art
| 2012-09-18 20:08
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