会津・漆の芸術祭をあとにして

f0230584_8212261.jpg


(会津・漆の芸術祭・報告書より)

 漆の芸術祭に参加できたことで、とても大切な体験ができた。

 ひとつめは、作品展示をさせていただいた、七日町通りにある藤崎商店のご夫婦との出会い。ふたつめは一緒に作品制作をしてくれた、東明幼稚園・若松第二幼稚園の子どもたちや、協力していただいた先生方との出会いである。ぼくにとってアトリエを飛び出して地域に入り、風土や人々の営みの気を吸いながら、よそ者視線で目新しい何かから発想をうけ、地元の人といっしょに制作をすることは、まさに、ワクワク、ハラハラの楽しい冒険ようである。まだ自分が知らないお宝と出会うからだ。そんな魅力は会津の場所や、人に気持ちのなかに、たくさんのキラキラしていたように思う。
例えば展示場所に乾物屋を選んだことも、その理由からである。ぼくの父親の故郷は青森で、乾物や缶詰というのは、子どもの頃からの東北へと思いを寄せる記憶だった。薄暗い店舗に並べられたそれらを見ると、嗅覚が想い出とともに反応してしまう。展示準備の下見のときに、芸術祭の展示ルートのひとつに、藤崎商店は欠かせないと強く感じた。しかし予想をうわまわったのが、店主である藤崎のお父さん。アート作品への客寄せぶりは、さすが商人の腕前でとても心強かった。まさに市民学芸員という感じである。作品説明に止まらず、地域の歴史についてもお客さんとおしゃべりしていた。そばで控える奥さんの存在も微笑ましく、会津女の真髄なのだろうと眺めていた。
 
それから、ふたつの幼稚園の子どもたちは、それぞれがことなる個性で、オマケにとても人懐っこい。これまでいろいろな地域でワークショップしても、こんなに自分が人気者になったことはあまり記憶がないから、よほど会津の子どもたちが素直で、好奇心が強いのだろうつくづく思う。彼らには自由に粘土を手渡し、カミタマンと題して、心のなか想像する神さまをつくってもらった。一昨年に福島県立博物館の民俗展示でみた、『七歳までは神のうち』という言葉から、地域の未来をささえていく、彼らこそが、神さまみたいな存在と確信があったからだ。それは美術の神さまでもあり、芸術祭という地域でつくるイベントでは、彼らの作ってくれたカミタマン土面や、新潟の海に沈む夕日とクジラの絵画、『くじらまつり』歌や踊りのパフォーマンスは、素晴らしく元気に満ちたアートなのだと思った。そして受け入れてくれた子どもたち同様に、忘れてならないのが、作品制作の補助を進めやすくしていただいた園の先生たち。子どもへの成長への育みや、思いやりの優しさを感じ、感謝しきりでした。ありがとうございました。
 
 さて、漆の芸術祭は博物館が館内展示に止まらず、城外の地域にまででて、アート企画をしたという珍しさと、伝統ある漆という工芸を題材にしたことも、他にはない芸術祭の特色である。ぼくも陶芸という工芸に身を置き、生活している。最後の最後まで悩んだのが、漆という素材だった。現代美術アーティストなら、漆も多くの素材のなかのひとつとして、割り切って使えるのだろうけど、同じように工芸という手仕事の専門、あるいは職人という経験をへた自分には、遠慮というか、敬意というボーダーを簡単に越えられず、作品のカミタマン土面の着色には、カシュー漆を使うことにした。芸術祭の終了後、知人である会津漆作家 村上修一さんの東京個展で、朝まで一緒に呑むことがあった。そのことを酒の力を借りて告白した。村上さんは真摯な人だから、そんなに難しく考えなくていいですよと、話してくれたが、今度は一緒に何かしましょうと、自分は付け加えた。

 会津、思えば人々の意識がたくさん入りまじりながら、漆黒のような深い色彩と輝きを生み、郷土愛の熱い血の流れが、朱という赤の流儀なのだろうと思う。芸術祭に参加して、少しばかりお邪魔したよそ者が生意気だろうが、会津にゆかりがある作家のひとりに加えていただけたことに、とても誇りに思う。もうぼくは会津にかぶれているな。
                                  出町光識




人気ブログランキングへ
[PR]
by ubusuna-art | 2011-02-24 08:23 | 創作(呪物)


出会いはアート。アトリエでのアート制作と、夜な夜なの日常是映画劇場のご案内。出町光識の脳内ナビゲ―ション日記  


by ubusuna-art

プロフィールを見る
画像一覧

最新の記事

雪、消えてしまえばその寒さす..
at 2013-02-06 10:25
ブログ留守がちですが。
at 2013-02-05 21:17
魅力ある教育、それがない現実。
at 2013-02-01 10:21
ワークショップとダイエットから。
at 2013-01-24 15:11
黙して契れ。兄弟、母、そして..
at 2013-01-17 18:53
あけおめ、もうすぐ個展です!
at 2013-01-05 20:07

ブログパーツ

その他のジャンル

記事ランキング

以前の記事

2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
more...

ブログジャンル

映画
アート・デザイン

タグ

検索

画像一覧